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【映画感想】桐島、部活やめるってよを観て。君はなんのために生きるのか。

映画を観るのが好きな友人がいる。

 

好きというのは語弊があるかもしれないのだけど、その友人は大学時代にとにかく映画を観ていて、1日1本は観てるよと言っているくらい。

 

映画を観るということは、他人の人生を追体験することで、一度しか無い自分の人生が豊かになると言っていた。たしかにその感覚は本を読んだ時に味わっていた。先人が、自分の価値観、知識、経験を総動員して作り上げた作品は心を震わせてくれる。そんな感覚を味わえるのはとても贅沢なことで、至福の時だと思うのです。

 

そんなこんなで、最近映画を見るようになりました。

 

今回観た映画は「桐島、部活やめるってよ」です。

 

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2010年に早稲田大学在学中にすばる新人大賞を受賞した朝井リョウのデビュー作で、吉田大八監督によって2012年に映画化された青春群像劇。

 

あらすじとしては

スポーツ万能、成績優秀、誰からも愛されて人気者、可愛い彼女もいて非の打ち所のない桐島がバレー部を突然辞めることによって、桐島を取り巻く人間関係の歯車が狂っていく様子を緻密に描き出した作品。

 

渦中の人物である桐島は、作中ほとんど姿も見せず、桐島の周りの人間だけで話が進んでいく。この桐島の周りの人達も、それぞれがそれぞれの胸の内で悩みを抱えて、桐島にすがるような思いで物語がクライマックスへと向かっていくのだけど、桐島が屋上にいる!という一声で屋上に全員が集まる。しかし結局、霧島の姿は現れない。そういった複数の登場人物の物語が並列に進んでいき、最後に大きな破局に向かっていくという構成を、映画評論家の町山さんに言わせると、ナッシュビル的手法というらしい。1970年代はじめにつくられたナッシュビルという映画がそうだったから。そう考えると、三谷幸喜監督の「THE 有頂天ホテル」もこの手法だといえるのかもしれない。

 

そしてこの物語の中で特に主人公的視点で描かれているのが、ひろき君と前田君。

 

ひろき君は桐島の親友で、野球部のエースだったのだけど、辞めてしまって、今は部活には入っていない。桐島の帰りを待つために仲間と3人でバスケをして時間つぶしをしているのだけど、バスケもうまい。そして彼女もいる。どうやら勉強もそつなくこなすようで、桐島に負けず劣らずの完璧人間と言える存在。

 

ただ、そんなひろき君は、進路で悩んでいるのだ。作中の最初で、進路について提出しなければいけない時に、なにも思いつかない。これは、これだけなんでもできて、傍から見ればなに不自由ない理想的な人なのに、これからどう生きていこうか、自分は本当は何がしたいのか、そういった生きる意味が分からないという悩みを持っている描写だ。こういった悩みは、なんでも求められることをそつなくこなせるタイプにあると思う。

 

一方の前田くんは、スクールカーストで言えば底辺に所属する典型的な運動音痴でいわゆるコミュ障の映画オタク少年。彼女はもちろんいない。ただ、カーストの底辺から観た立場というわけではなく、カーストの外から様々な価値観を客観的に眺めているような形になっている。前田くんは映画部に入っていて、冒頭で映画のコンクールで選考を通過したことを表彰されている。その映画はおそらく青春恋愛ものの映画だったのだろうが、顧問が「高校生にとってのリアルって、そういう恋愛とかだろう」というのに対してまったく共感していない。むしろゾンビ映画のほうが俺にとってはリアルだと言って「生徒会オブ・ザ・デッド」という映画を自主制作する。

 

前田くんは、ヒーロー桐島とまったく無関係だから、黙々と自分の好きな映画をただひたすら追求して、撮るということをしている。

 

ひろき君は、何でもできるのに、なにもやりたいことがない。

前田君は、何もできないけど、映画を撮ることがやりたい。

 

そんな対比構造になっていて、2人はクライマックスの屋上のシーンで初めて邂逅する。

 

前田君は8ミリフィルムをひろき君にからかわれたりして、ふざけた調子で「将来の夢はなんですか?映画監督ですか?アカデミー賞狙ってますか?」と聞かれるのだけど、その時に照れた様子で、「それは無理かな。。」と答える。

 

でも、その好きなことを好きだからただ純粋にやっている姿が、ひろき君には美しく、羨ましく感じた。

 

前田君はお返しにとばかりカメラを構えてひろき君を撮るのだけど、「かっこいいね」と素直に言う。いや本当にひろき君はイケメンなのだけど、ひろき君は「全然かっこよくねえよ」と涙を流す。

 

好きなことに向かって、かっこ悪く見えても突き進む、そんな前田君がかっこいい。

 

それぞれの人間に抱えるコンプレックスや空虚が言葉を語りすぎること無く描かれていて、見ていてうわああと頭を抱えたくなってしまったり、分かる分かると頷いてしまうような映画でした。

 

実は、その言葉として語られすぎないがゆえに、初見ではなかなか良さがわかりづらい映画になっていると思います。特に、映画を見慣れていない人とか、登場人物の感じたことを想像しながら観る癖がない人は。自分はそうだったので、後で映画評論を読んだのですが、非常に深く、観る人によって表情を変える映画だなあと思いました。

 

参考までに映画評論をリンクしておくので、ぜひご一読いただけたら、より楽しめることと思います。

 

matome.naver.jp

 

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映画はこちら

 

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