豊かな表現力を身につけるには、便利な言葉を禁止してみるといい

豊かな表現
「美味しい」という言葉を禁じると、美味しさを表現するための言葉や感覚が豊かになっていく。「豊かな表現」みたいなものは、獲得を強要するよりも、一番便利な言葉を禁じるとうまくいく。
いつか読んだ言葉で、なるほどと思い、メモしていた。

人の文章を読んだ時、この人は表現力があるなあと思う場合、同じ語彙を乱用していない。

例えば、春に桜を見に行くと「きれい」だとなり、夏に海に行って沈む夕日を見れば「きれい」だ。秋に紅葉を見れば「きれい」だし、冬の庭に降り積もる雪を見て「きれい」だと言う。

自分の中でおさめておく感覚であればそれでもいい、それぞれの「きれい」にふくまれる意味はまったく別物だし、一緒にいた人やその時の出来事によっても変わる。

しかし、人に伝えられる文章を書きたい、と思う時はダメだ。

春に桜を見に行くと儚く散る花びらが趣を感じさせる。

夏に海に行って水着の女の子はエロくてかわいい。

秋に紅葉は艶やかな紅の舞のようだ。

冬の庭に降り積もる雪は君の白い肌を思い出す。

え?全然豊かな表現ができていない?そんなこと言わないでください。これでも今の精一杯です。

日本に生まれてよかったと思うことの一つは、言葉に対して繊細なところだ。

言霊と言って、言葉には魂が宿るとも考えられるように、非常に大切に言葉を扱う文化がある。

平安時代には今よりももっと細かく色を分けて考えていて和色名 五十音順一覧:日本の色・和色
このサイトでは383色も紹介している。

言葉が増えることによって、自分の見える世界はより鮮明になると思う。テレビで言えば画素数が高くなるのと同じように。

ふと気が向いた時でいい、便利な言葉を禁止してみて、豊かな表現に近づいてみてはどうか。