立秋を過ぎて、秋に思うこと。秋の風情と茶の湯。
そういえばいつのまにやら立秋が過ぎて、夜には虫の音が聞こえるようになってきた。
夏に蝉が木々の上から鳴いて土砂降りのように頭上に降り注ぐ様子を蝉時雨というけど、どうやら秋に鈴虫やキリギリスが鳴くことを同じように虫時雨というらしい。
八月はジメジメしていた六月やムワッとする七月とはうってかわって空気が澄んでいて、虫の声や、風に吹かれて葉の擦れる音がよりいっそう聞こえる。それがもの寂しさを感じさせる。
秋きぬと、目にはさやかに見えねども、風の音にぞ驚かれぬる
これは立秋に詠んだとされていて、昔と今ではおそらく時期は違うけど、たしかに目には見えないけれど、秋の匂いをふと感じる時がある。涼しさの混じった風。
そういえば、歌で思い出したけど、七草といえば春の七草ばかりが有名だけど、秋にも七草がある。
秋の野に咲きたる花を お指折り かき数うれば 七種の花
これは山上憶良が万葉集に寄せた歌。尾花はススキのことで、朝顔は、当時は今で言う朝顔のことを指していなかったとも言われていて、桔梗のことであるとの説が有力で、間違えやすいから注意。
見に行きたいなあと思って調べたらちょうど国分寺の殿ヶ谷戸庭園で秋の七草を楽しむ会をやるみたい。まだ先だけど。
殿ヶ谷戸庭園では、毎年恒例の「秋の七草を楽しむ会」を開催いたします。万葉集で山上憶良が詠んだ和歌に由来する秋の七草は、萩(ハギ)・尾花(オバナ:ススキのこと)・葛(クズ)・女郎花(オミナエシ)・藤袴(フジバカマ)・桔梗(キキョウ)・撫子(ナデシコ)の七種。古来より親しまれてきた七草を是非お楽しみください。
他にも秋といえば、鹿。秋は鹿の交尾期に当たるから、ケーンケーンと鳴いて、それがとても哀愁を誘う声で、秋の侘びしさにぴったりだったみたい。鹿といえば奈良。奈良には行ったことないから行きたい。虫の声は普通に聞いたことあるけど、鹿の声は聞いたことないんです。
二期鳥と呼ばれる雁も秋の風物詩。春と秋に渡る渡り鳥の雁も秋の意匠。
秋の月には兎。月の影がうさぎに見えるというのもそうだけど、故事がある。
みすぼらしい老人に食べ物を与えようと頑張った猿と狐と兎。猿は木の実を集めてきて、狐は魚を捕まえてきた。兎はなにも集めることができず、猿と狐にお願いして火を燃やしてもらった。そこに自ら飛び込んで焼かれ、兎の肉として自分を食べてもらおうとした。
実はみすぼらしいおじいさんは帝釈天が身を扮していて、自らを犠牲にした心優しい兎を後世にも伝えるために月に登らせた。
なんて話。
帝釈天も兎が焼け死ぬ前に助けてあげたら良かったんじゃないかと思うけど、そうするとお話ではなくなってしまうから置いておいて。
兎で思い出したけど、兎は一羽、二羽と数えるんだよね。肉食を禁じられていたお坊さんが、これは鳥です、だって二枚の羽があるでしょう(耳のこと)なんて言って抜け道にしたからとかなんとか。
最後少し脱線したけど、秋について考えていたら楽しくなってきた。
夏も楽しかったけど、秋も楽しい。
季節の移り変わりの中でその時その時を楽しむことができるから茶の湯は奥深いなあと思う。
9月1日にまたお茶会開く予定なんだけど、道具組はなんのお道具を使おうかなあとか、お菓子はなににしようかなあとか、ワクワクしてしまう。
お菓子は柿のモチーフがいいよね。兎と合わせてお月見団子もいいなあ。
読書の秋。本読んで、勉強して、もっと風情を楽しんでもらえるお茶会をひらきたい。